前十字靭帯
【意外と傷つきやすい】
前十字靭帯は、まるで関節という水の中に浮いているように存在し、細かくは2本が重なって一つの靭帯となっています。長さは3cm程度で、その10%が歪むと損傷すると言われており、意外と切れやすい靭帯です。
【診察に必要な人と物】
検査(MRI)だけではダメです。
スポーツの現場の経験の長い医師や、
前十字靭帯手術の経験の多い
医師の診察が必要不可欠です。
・絶対必要→経験のある医師の診察(問診・触診)
・必要→レントゲン検査とMRI検査(1.5テスラ以上)と撮影技術のあるMRI検査技師
・必要→画像診断医のご意見(MRI検査読影専門の医師)
・まあ必要→エコー検査、ATT測定
【岩村選手の前十字靭帯】
当時メジャーのレイズに在籍していた岩村選手は、左膝を負傷し、MRI検査などで、前十字靭帯完全断裂と診断され、2009年6月22日に腱を移植する再建手術を開始。ところが手術中に小さな損傷だけであることが判明。再建手術が不要となり、手術後に医師団は、6−8週間で復帰できると発表した(手術前は復帰まで6−8ヶ月の予定だった)。
当時は奇跡とメディアで紹介されました。前十字靭帯の怪我は、こういうことは意外とあります。ただ、診断が変わる場合は、最初に「切れていない」と診断されたのに、何日か経過して「切れていた」と判明することのほうがほとんどです。
【切れたままで試合はできる?】
シーズン中だったり大会前ですと、とりあえず、シーズン終了までは切れたままプレーできないか?ということもあると思います。競技の種類や選手の骨格や動きの特徴により、できることもありますが、パフォーマンスはかなり低下します。問題は痛みよりも、【膝がくずれる】ことにあります。
損傷したままプレーをすればするほど、軟骨や半月板が傷つき将来のスポーツ活動に影響が出る場合があります。一時的にはプレーができても、その後もスポーツ活動をされていく方は手術治療が基本になります。
【治療は慌てない】
せっかちな患者さんは、結局治るまで遅くなります。ゆっくり治すという意味ではなく、「腰を据えて取り組む」ということです。
・まずは、初期治療をしっかり行い怪我をこれ以上悪化させないこと。 ・同時に、できるだけ正確な診断(他に傷ついている場所も)をすすめていきます。
・さらに、膝の動きを回復し、下半身の筋力を正常に戻していきます。
もし手術になっても、手術後のリハビリは長期に渡りますので、膝の動きと太ももの筋肉が良い状態でないと、手術の後のリハビリに耐えられません。最近は、手術をすると決まったら早く手術をするメリットがあるという考えの病院もありますが、いづれにしても、手術は内視鏡とはいえ、メスを入れますので、膝の体力を奪います。
【傷ついていますか? 完全に切れていますか?】
前十字靭帯は、傷ついている状態(部分損傷)か、完全に切れている状態(断裂)かはあまり大きな問題ではありません。皆さんは区別をする必要はないと思います。
病名で治療が決まるのではなく、膝くずれがあるか? 他に半月板や骨が傷ついていないか? 将来のスポーツの希望etcにより、治療方針が決まります。
なお「前十字靭帯損傷」の中に「断裂」と「部分的な損傷」が含まれます。
診察時間のご案内
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